新年のご挨拶

日本消費経済新聞・2025年頭所感

(特定非営利活動法人消費者ネット広島 副理事長) 宮永文雄

つながりを欲する社会

新年あけましておめでとうございます。

BeReal(ビーリアル)というSNSをご存じでしょうか。1日1回、ランダムな時刻に通知が来たら2分以内にスマートフォンの前後両方のカメラで今いる場所の写真を撮影して投稿するのがお約束です。写真を投稿しないと、友達の写真を閲覧できなくなります。私は普段、大学で教育・研究に従事しているのですが、ここ1、2年、若者たちの間でこの奇妙な(?)SNSが流行しているのを感じます。まさに自分の「今」を友達と共有するサービスで、昭和世代の私には、(こんなことができる時代になったのか…)と感慨深いものがあります。

しかし、通知は想像もしなかった時間にやってきます。授業中でも仕事中でもお構いなし。なかに授業中に写真を投稿してしまう学生もいるようで、そこまでつながりが大事なのかと呆れてしまいます。LINEもメッセージが届いたら即返事をするのが文化になっているコミュニティもありますから、その延長なのかもしれません。

社会情勢と同じく、SNSについても変化は目まぐるしく、隆盛を誇ったX(エックス)すなわち旧Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)にも陰りが見えてきましたし、TikTok(ティックトック)は米国で規制法が成立するなど、曲がり角に来ています。最近ではThreads(スレッズ)やBluesky(ブルースカイ)などの利用が目立つようになってきました。これからも新しいサービスは次々と登場するでしょう。

SNSは社会を動かす大きな力となっている反面、不確かな情報が急速に広まる媒体ともなっています。消費者被害も増加中で、SNSで紹介されていた店に注文したが詐欺サイトだったとか、SNSで知り合った相手との取引で代金を支払ったが音信不通になったなど、トラブルの事例は枚挙に暇がありません。人と人とのつながりを基礎とするツールの情報は、心に訴えかけやすく、テレビや新聞・雑誌の広告には反応しなかった消費者も、あっさりと信じてしまいがちです。口コミと先端技術の相乗効果と言えるでしょう。悪質商法は、このような心の隙間を目ざとく見つけ、私たちに迫ってきます。

怖い側面はありますが、私もSNSなしの生活など考えられなくなっています。いまから20年前にmixi(ミクシィ)に招待されたが最初ですが、いま使っているのはInstagram(インスタグラム)が中心でしょうか。新しいサービスが出るとすぐに飛びつきますので、私もつながりが欲しい人なのかもしれません。

それはともかく、私たちも人と人とのつながりは大切に、そのことが消費者被害の防止に役立つよう、努力を続けて行きたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

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