特定非営利活動法人消費者ネット広島 理事長 木村 豊
だまされない消費者になるために
新年あけましておめでとうございます。
消費者ネット広島が法人格を取得して20年を迎えた昨年の定期総会において、中央大学文学部の有賀敦紀教授に、「だまされない消費者になるための心理学」と題した記念講演をしていただきました。人はなぜだまされるのかということについて、「サンクコスト効果」とか「後知恵バイアス」といった心理学的な機序を用いつつ、大変分かりやすい説明でとても好評でした。
若者や高齢者などを狙った悪質商法や特殊詐欺による被害等が後を絶ちません。人はなぜだまされるのでしょうか。有賀教授によれば、「だますということ」はその人の「行動を変容させるテクニック」だそうです。考えてみれば、テレビなどでたくさん流れているCMも、購買意欲のない人を購買行動に変容させる手段ですから、心理的な機序においては、いわば「だましのテクニック」と同様な手法であるともいえます。このところ旧統一教会による多額献金等で問題となっている、いわゆるマインドコントロールについても、時間をかけてその人の行動を変容させるための手段であり、心理的な機序においては同様の手法といっていいと思います。
当法人は、法人格を取得後20年にわたり、事業者による不当、不正な行為の是正を求める活動と消費者の被害を防止するための活動とを二大車輪と位置づけ、差止請求とともに若者を中心とした消費者への啓もう活動、高齢者に対する見守り活動等にも力を注いできました。昨年4月には成人年齢が18歳に引き下げられましたが、これによって若年者に対する消費者被害がどのようになっていくのか、注視することも必要となります。
マインドコントロールについては、それを解く最善の方法は、反対情報の提供とその理解であるといわれています。同様に、だますということが人の行動を変容させるテクニックであるとすれば、逆に言えば、だまされないということも、人にその方向への行動に変容させる情報を提供することによって達成できることになります。
当法人は、こうした観点から、事業者に対する働きかけと消費者自身に対する働きかけを両輪としつつも、若者を中心とした消費者への啓もう活動、高齢者に対する見守り活動に対しては、より一層留意していきたいと考えています。皆様のご支援とご協力の下で、当法人もさらなる歩みを続けてまいりたいと存じますので、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。