県内の活動紹介 〜地域や関係者の取組〜
介護サービスの現場から
一人暮らしの高齢者が増えている昨今、悪質業者はこうした高齢者をターゲットとして様々な手口で接触してきます。
高齢者が消費者被害に遭い、その財産を悪質な事業者に奪われてしまっては、そもそもの生活ができなくなり、介護保険料さえ払えないといったケースも生じます。
一方、介護サービス事業に携わる方々は、こうした高齢者と社会との貴重な接点であり、介護の現場で高齢者の抱える問題などに気づいた時、適切な対応によってトラブルの防止や救済ができる可能性があります。
今回は、こうした介護事業所のひとつである「生協ひろしま訪問介護サービス・呉」で実際の事例をお伺いできましたので、ご紹介します。
介護サービスの現場で消費者被害を防いだ事例
介護サービス提供責任者(介護福祉士)(以下、「担当者」といいます)が利用者のお宅を訪問した際に、床下工事の契約場面に出くわし、高額な工事を未然に防いだ事例です。
★事例
利用者 : 男性・独居・80歳代・軽い認知症・要支援2
担当者が、訪問介護計画書を作成したので、利用者の自宅を訪問した際に、業者が外の下水管の高圧洗浄を行っていた。
家に入ると、利用者の方が同じ業者の別の人と契約書を交わしているところだった。
その業者は、「最近は悪質商法が多いのですが、私どもはきちんと契約させて頂いているんですよ」と話していた。
どこか気になったので利用者との用事を済ませている合間に、契約書の金額と事業所名を見て利用者宅を出た。家を出てすぐにメモをしたが、金額が15,750円であり、下水管がきれいになっているのを確認していたので、妥当な金額かなとは思った。
ただ、業者が別の書類を隠した様なそぶりが気になっていたので、事務所に戻り報告をした。
事務所に報告したところ、事務所の責任者が、いわゆる点検商法の手口を知っていたので、念のために遠方のご家族へ連絡をした。
その後、ご家族から連絡があり、「家には契約書が別にもう1枚あって、合計100万円もの床下工事等の契約をしていた。本人が契約解除の申し出をしたところ、脅すような事を言われたが、何とか契約をキャンセルできた。」とのこと。
一枚目の契約書の金額だけを見て納得できる金額と思っていたが、「家族へ様子を報告してよかった。」と事務所内で喜んだ。
また、この情報を事務所内で共有していたところ、別の利用者のお宅でも同じ業者名の領収書を発見し、こちらの被害も未然に防ぐことができた。
★被害を防ぐことができたポイント
・利用者の様子をよく見ていたこと
・おかしいと感じたことをすぐに事務所に報告したこと
・事務所内で、日頃から会報誌等による情報を得る機会があったこと
見守りをされている方の、機転のきいた対応のお蔭で被害を未然に防ぐことが出来た事例です。
最初、この担当者は、「不確かな情報で大丈夫なのか」「利用者さんを傷つけはしないか」「自分の判断だけで大丈夫なのか」という思いから、事務所に報告するかどうか躊躇したそうです。
このような悩みをもちながら、日々の介護サービスに従事されている方も多くいらっしゃると思いますが、少しでもおかしいと感じたことは、事務所に報告、相談しましょう。被害を未然に防ぐ第一歩になります。
また、事務所内でも最新の消費者被害に関する情報を入手するようにし、少しでも不審な点があれば、速やかに地域包括支援センターや消費生活相談窓口等にご相談いただければと思います。