県内の活動紹介 〜地域や関係者の取組〜
広島市中区介護支援専門員連絡会で「高齢者等見守り研修」が行われました
広島市中区介護支援専門員連絡会では、勉強会を2か月に1回実施しています。
平成28年3月15日、広島市消費生活センターの消費生活相談員、寺本ひとみさんを講師に迎えて「高齢者等見守り研修」についての講演会がおこなわれ、約80名のケアマネジャーの方々が参加されました。
「高齢者を消費者被害から守るために」
講師 広島市消費生活センター 消費生活相談員 寺本ひとみさん
◆平成26年度 消費生活相談状況の説明
・広島県全体の相談は約3万件、その内3分の1の約1万件が広島市の相談。
・特に増えた相談は「不当請求・架空請求」「インターネット通信サービス」。
・「不当請求・架空請求」では、ショートメールを使った、アダルトサイト未払金の架空請求が増大。
◆なぜ、消費者被害にあうのか
高齢者の3大不安「健康・お金・孤独」につけ込まれる。
◆消費者被害の未然防止、拡大防止のためには、「気づき」「つなぐ」ことが大切
・身近な方が、高齢者に寄り添うことによって被害に「気づく」。
・高齢者の自尊心を傷つけないよう配慮しながら、「つなぐ」ことが被害の解決につながる。
★つなぐ機関の具体例
・地域の方⇒民生委員・地域包括支援センター
・ケアマネジャー⇒お住まいの市町消費生活センター
・被害額が大きい、あきらかに詐欺の場合⇒警察
◆クーリング・オフを知ろう
クーリング・オフは消費者にとって、とても強い味方だということを知り、何かあれば消費生活センターに相談する。
★クーリング・オフの利点
・理由がいらない
・費用がかからない
・使用していてもかまわない(ただし、消耗品は除く)
◆「気づき」「つなぐ」ことで消費者被害を解決できた事例を紹介
消費生活相談員は、相談者の家に訪問することができないため、高齢者の消費者被害の未然防止、拡大防止のためには、福祉関係の方との協力が必要不可欠である。
実際に福祉関係の方が、消費者被害に気づき、消費生活センターへ相談したことによって、消費者被害を解決できた事例を紹介。
[相談者] 福祉関係の方(Aさん)
[契約者] 80歳代 女性
[商品名] 羽毛布団
[気づき] 請求書を発見
福祉サービス利用者が、訪問販売で羽毛布団を契約。支払困難で解約を申し出ても解約してもらえず、請求書が届いているのを発見した。
[相談内容] Aさんは、利用者宅で訪問販売で購入した布団の請求書が入った封筒を発見した。利用者に事情を伺うと「病気の娘と背中の痛い自分のために訪問販売で購入した。その後、年金生活で家賃や公共料金を支払うと残りが少なく、支払が難しいので布団は要らないと担当者に伝えたが、年金が入った時にいくらかでも支払ってもらえればいいと言われ、解約させてもらえなかった」とのこと。布団は未使用で袋に入ったまま。契約書面を探したが見つからない。「頭金を支払ったまま、その後は支払っていない。担当者が時々訪問して来る」とのこと。利用者は認知症がある。どうしたらいいか。
[解決結果]
・契約書面が法定書面の記載事項を満たしていなければ、今でもクーリング・オフできる。契約書面を再度探してほしいと依頼。たとえ記載事項を満たしていたとしても、判断能力不十分者への契約として主張し、合意解約に向けて交渉できる可能性はある。また、本人から直接、解約意思を確認してからセンターがあっせん(※)に入る旨伝えた。
・本人の解約意思を確認。勧誘方法等を伺ったが覚えていないとのこと。
・Aさんも一緒に書類を探し、頭金の領収書と契約書面が見つかったので、センター宛にFAX送信を依頼。
・センターから業者に電話をかけ、本人の状況等事情説明し、既払い金放棄で解約検討を依頼する。
・残金10万円、既払い金2万円であったことが判明。検討結果、業者より、既払い金放棄で解約を受けることになり、布団は引き取りに行くことで双方了解した。
引き取りの際には、Aさんも同席してくださった。
(※)あっせんとは、消費者と事業者が話し合いで解決する場合、情報力や交渉力の格差を解消して、消費者が事業者と対等に話し合うことができるように、公正・中立な第三者の立場でお手伝いをすること。
★紹介する相談事例は一つの参考例です。同じような商品・サービスに関するトラブルであっても、個々の契約等の状況などが異なれば、解決内容も違ってきます。
今回の勉強会では、講師の寺本さんから、福祉関係の方の支えのおかげで解決できた事例が紹介されました。高齢者に身近な方の「気づき」「つなぐ」ことの大切さがよくわかる事例でした。寺本さんからは、他にも事例を紹介していただきましたので、今後、「見守り事例」として紹介させていただく予定です。日頃から高齢者と関わっている皆様の見守りの参考にしていただければ、と思います。