60歳以上の消費者トラブルの変化と実態
2016年9月8日 独立行政法人国民生活センター 発表資料より
全国の消費生活センター等に寄せられる相談のうち、契約当事者が60歳以上である相談の割合は2011年度以降、毎年3割を超えており2015年度は5年前の2010年度の約1.2倍になっています。
一方、その相談内容は5年前と比べ大きく変化しました。2010年度と2015年度を比較すると、金融商品の「劇場型勧誘」等の不意打ち的な勧誘に関するトラブルが減少し、自発的に取引を行う通信販売に関する相談が増加しています。さらに、どの年代においてもアダルトサイト等のデジタルコンテンツや、光ファイバー、携帯電話サービス等の情報通信関連の相談が増加しており、特に60歳代でこの傾向が顕著にみられます。
これらの変化の背景には、通信端末やインターネットを使い、積極的に消費活動をしている「アクティブシニア」が増加していることが影響していると考えられます。一方、80歳以上では変わらず、判断能力が不十分な状態での契約トラブルも多くみられます。このように 60歳以上の消費者を一括りにまとめることは難しく、今後も 60歳以上の生活スタイルや通信環境の変化に伴い、消費者トラブルも変化していくことが予想されます。
60歳以上の消費者トラブルの相談事例
(1)近年増加している情報通信関連トラブル
【事例1】アダルトサイトから料金を請求され、ネット検索した探偵業者と契約したが断りたい
【事例2】フィーチャーフォンとタブレット端末を契約したが、無料通話ができなくなった。元に戻したい
【事例3】インターネットで海外ホテルの予約やキャンセルを何度かしたら、クレジットカードに複数の請求がきてしまった
【事例4】知らない間に光回線の契約先が聞いたことのない事業者に変更されていた。元に戻してほしい
(2)引き続き見られる電話勧誘販売・訪問販売トラブル
【事例5】金融庁の捜査を防ぐために必要と言われお金を振り込んでしまった
【事例6】高齢で一人暮らしの母がトイレの修理を依頼したところ思いかけず高額な料金を請求された。納得できない
【事例7】私が読まない新聞が勝手に配達されるようになったが、契約をしていないはずなので止めてほしい
【事例8】高齢の母が電話勧誘で次々に健康食品を購入させられ、約130万円を振り込んでしまった
消費者へのアドバイス
<60歳以上の消費者の方へ>
★インターネットのトラブルについて、対処法などの情報収集を積極的にしましょう
無料だと思っていても、アダルトサイト等は突然料金を請求されることがあるので、不用意にアクセスしないでください。身に覚えのない請求をされた場合には、あわてて支払ってはいけません。 また、インターネット通販では、購入前に実物を見たり手に取ったりできないため、イメージと違う、サイズが合わないなどのトラブルになることがあります。また、返品・交換ができなかったり、キャンセル料を請求されたりすることもあります。さらに、お試しのつもりが定期購入になっていたといったトラブルもみられますので注意が必要です。通信販売にはクーリング・オフがなく、事業者が返品の可否等について特約を表示している場合は、原則としてそれに従うことになります。契約内容や返品・解約ルールについてよく確認してから申し込むようにしま しょう。インターネットのトラブルは種類によって対処法が異なりますので、積極的に情報収集をしてください。また、消費者トラブルの解決をうたう事業者による二次被害や、国民生活センターや公的機関をかたる詐欺的な手口に気をつけてください。
★高齢になるほど電話勧誘販売や訪問販売のトラブルが増加します。自分だけで判断せず、 すぐに周囲の人や最寄りの消費生活センターに相談しましょう
高齢になるほど、電話勧誘販売や訪問販売に関する相談が増加しています。中には、本人の努力だけでは防ぎようのない巧妙な手口による勧誘を受けることもありますので、周囲の人や最寄りの消費生活センターになるべく早く相談しましょう。また、通話録音装置などの「防犯アイテム」を利用することも方法の一つです。
<60歳以上の消費者の周囲の方へ>
★60歳以上の消費生活や通信利用状況には大きな個人差があります
インターネットやスマートフォンを使いこなすアクティブな高齢者は増加傾向にあり、60歳以上の方の生活スタイルには大きな個人差があります。また、認知力の低下にも個人差があります。周囲にいる60歳以上の消費者の生活スタイルの違いを把握し、どのような消費者トラブルに遭いやすいのか考えてみてください。
★生活や言動、態度等の変化に気付いたら本人に声をかけましょう。トラブルや被害にあっているとわかったら、すぐに消費生活センター等に相談しましょう
60歳以上で特に高齢の方の消費者トラブルには、認知力の低下だけでなく、生活困窮や社会的孤立等があるとも言われています。高齢になるほど家族からの相談が増えますが、消費者本人からの相談が少なくなるということは、周囲の気付きや対応が遅れると被害が拡大してしまうことを意味しています。地域や家族による見守りが欠かせません。消費生活センターへは、家族やホームヘルパー、地域包括支援センター等の職員からでも相談することができます。トラブルや被害にあっているとわかったらすぐに最寄りの消費生活センター等に相談しましょう。
2016年9月8日 独立行政法人国民生活センター 発表資料はこちらから
(事例や各年代ごとの特徴など、詳しくはこちらをご覧ください)