思わぬ大けがに!高齢者の脚立・はしごからの転落
-医療機関ネットワークからみる危害の実態-
2019年3月28日 独立行政法人国民生活センター 発表情報より
脚立やはしごは、高い所での作業や移動に使用される用具で、家庭でも広く使用されています。庭木の手入れや荷物の整理など、脚立やはしごを使用した作業中にバランスを崩すなどして転落する事故の情報が、医療機関ネットワークに寄せられています。その半数以上が60~70歳代の高齢者です。
加齢により身体・認知さまざまな面での機能のおとろえがみられ、若年者のようにバランスをとることや、複数のことを同時にすることが難しくなってきます。また、転落事故により死亡に至らなくとも、骨折などのけががきっかけとなり介護が必要な状態になるおそれがありますので注意が必要です。
主な事故事例
【事例1】梅を採ろうと脚立の約3mの高さで作業中にコンクリートの地面に転落した。音を聞いた妻が駆けつけたが、呼びかけに反応がなかった。外傷性くも膜下出血、急性硬膜下血腫、頚椎椎体骨折を3カ所認めた。(70歳代後半・男性)
【事例2】庭で剪定(せんてい)作業中にはしごから転落した。うめき声に気付いた近所の人が救急要請した。頚髄損傷があり、完全麻痺を認め入院、同日ドクターヘリにて脊髄損傷の専門機関へ転院した。(60歳代後半・男性)
※電球交換、掃除など身近な作業での事故事例もあります。低い脚立だからと安心しないようにしましょう。
消費者へのアドバイス
★脚立やはしごを使用しない方法を検討しましょう。
・剪定であれば造園業者に頼むなど、専門家に依頼することを検討してください。
・荷物の整理や電球の交換などの屋内作業は、身近な若年者に依頼することを検討してください。高齢者の中には他人には頼み辛いと考える方もおられますので、周囲の人も普段から声を掛けて身近な事故防止に努めましょう。
★一人きりでの作業はやめましょう。より安定性の高い用具を選択しましょう。(※1)
・作業を行う場合は、可能な限り複数人で作業を進めるようにしてください。特に、はしごは必ず大人の補助者が支えるようにしてください。
・安定性補助器具が付いたより倒れにくいもの、踏ざん(ステップ)が広く、身体を支えられる上枠が付いたものなど、用具と身体の安定性を考慮して脚立やはしごを選択してください。
★あらかじめ無理のない計画を立て、作業中の「あと少し」をなくしましょう。
ヘルメット、動きやすい服、滑りにくい靴などを事前に準備しておきましょう。
・高齢者は、加齢により自身の身体能力を誤認識しやすくなり、届くと思った枝に届かずにバランスを崩して転落することが考えられます。また、物事を考えながら身体を動かす能力の低下もみられますので、あらかじめ作業内容をイメージしておき、脚立やはしごに上ってからはバランスを取ることに集中できるようにしましょう。
・高所作業中に「あと少し」であっても、事前の計画と異なることはせず、一旦下りてから脚立を再度設置するほか、体調や天候なども考慮して、次の機会に続きをするなど、安全を第一に考えて柔軟に作業を進められるようにしましょう。
★確実に設置し、バランスを崩しにくい姿勢で使用しましょう。
・作業前に用具を点検し、破損や歪み、がたつきがある場合は使用を中止してください。
・脚立でより安全に作業するためには、少し大きい脚立の天板から少なくとも2段下の踏ざんに立ち、余らせた上部で身体を支えながら使用すると良いでしょう。高所で少しでも不安定だと感じたらすぐに中止してください。
★転落した場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
転落直後に意識がはっきりしていても、頭部を打った可能性がある場合は、あとから状態が悪くなり、最悪の場合は死に至ることもあります。救急車を呼ぶことをためらわず、直ちに医療機関を受診してください。
(※1)安全に配慮した製品例
脚立やはしごは昇降面左右方向へ転倒しやすいため、その転倒防止策として安定性補助器具を付けた製品やその別売品が各メーカーから販売されています。
また、作業の安定性を高めるために踏ざん(ステップ)幅を広げた脚立、作業時に手で支えられるような上枠付の専用脚立なども、各メーカーより販売されています。
2019年3月28日 独立行政法人国民生活センター 発表情報はこちらから